【2025年1月】年賀状じまいブームと「食事の戦略」【書評】

閉めたあとに読んだ人脈作りのノウハウ

昨年、年賀状ハガキは1枚63円から85円に値上げされた。
これをきっかけに「年賀状じまい」という言葉が連日、
マスコミを賑わせ、年賀状じまいのスタンプは飛ぶように
売れたらしい。

私もゆるやかではあるが、年賀状からメールやSNSでの
年始ご挨拶に切り替えた。

それを終えつつある昨今、対極にあるような人脈作りの
ための本が出版されていたので読んでみたのである。

◆令和版エチケット入門の趣

作者は生命保険会社でのサラリーマン生活を経て
人脈を繋ぐ「絆プロデューサー」として数多くの
食事会を企画しているそうだ。

食事の戦略というから、都内のレストランの場所や
味の良し悪しを語るようなウンチク本かと思ったら、
全く違った。

私は「ぴあマップ」を毎年買っていた世代である。
どこに何があるか?だけではない、ちょっとした
コメントや色使いが楽しみで買っていた面もある。

恐らくそういう世代(50代以上)にはささる内容
ではないだろうか。

本書に一環しているのは
「内向的な人が、いかにして人脈を広げていくか」
のプロセスを真面目に紹介するということのようだ。

その例として名刺交換にFocusした章が面白かった。
名刺交換はビジネスの基本、
そして
「肩書」より
「覚えてもらえるフレーズ」というのは
私が考えていたこととはまったく逆だった。
(名乗ったもの勝ちでいいんだ)と少し
ホッとさせられた。

◆幹事のやりがいを読みつつ

名刺交換した相手と1対1の関係づくり
にもちこみ、そこから共通点を割り出して
3人会、さらに発展させて10人規模の勉強会
や趣味の会、朝食会へ発展させるまでの
プロセスや注意点も中々面白かった。

私は元々、役所の委託事業をやる財団の職員
だったので、国政会議運営やセミナーの感覚が
未だに捨てきれない(悪い習慣である)。

まず大臣、次官、審議官、局長、課長、課長補佐の
役職と名前を一致させて席次を決め、自分達は
末端の末端に下がる。
粗相をしないことを会議運営として叩き込まれ、
マニュアルは何版も重ね、その更新で前日は深夜残業
だった。

しかし、この本の作者が取り仕切る会は、ホストが
真ん中に座り、相手の関心が高いことをベースに
話を進める。

ビジネスにつなげたい人脈作りではあるものの
「(相手の)面子」より「情報交換」が重要で
しかも高度なテクニックが要求される。

知的かつ楽しい会にするための時間設定や
料理の選び方まで、中々奥が深かった。

◆「しがらみ」から脱する

この本を読みながら、ゆるやかな年賀状じまいを
した交友関係を振り返ってみた。

何年も会わない人に「今年こそ会いたいね」と書く
社交辞令に意味はあるのだろうか?

本当に繋がってくれる人なら、はがきに掲載されている
メールアドレスやSNSアカウントや携帯のショートメールに
連絡をくれるはずである。そういう人と繋がっている方が
自分の心が軽くなるのではないだろうかと思ったのが
発端である。

卒業後5年以上経過して地元の同窓会に参加したことが
あったが、参加者は、思い出話、自慢話、噂話、下品な話
(男性陣)になりがちだった。

元々、知的好奇心の高い人が住んでいる地域なら
ともかく、地域社会でしか通用しない常識をふりかざす、
参加者が参加費用をきちんと支払わない等に嫌気がさし
「地域のしがらみから逃れたい」という理由で、
高校・大学は離れた場所に進学する人もいるだろう。

そういうしがらみから脱したい、共通の趣味・同じ価値観を
持つ人たちと、ゆるいつながりを持ちたいという人には、
この本はうってつけかもしれない。

ただ、大都市圏なら受け入れられそうなつながりだが、
そうでない場合、どこまで許容されるのだろう。

しかし、この人脈形成のノウハウ、人との付き合い方は
オンラインサロンのミーティングにもそのまま使える
汎用性の高いビジネスマナーがたくさんあった。

ノウハウ本だけどマナー啓発にもなるいい本だったが、
1か月間の交際費とその食事会の内訳もチラッと紹介
してくれたら、もっと面白かった。

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