【2025年7月】男性の「更年期」にも必要な健康経営の視点

45歳を過ぎた頃から、「めまい」「のぼせ」「手足のしびれ」といった身体的な不調に加え、「やる気が出ない」「集中できない」といった精神的な症状を訴える男性が増えていることをご存知でしょうか。

これらは、実は男性にも存在する「男性更年期」の症状かもしれません。これまで更年期は女性特有のものとされがちでしたが、近年では著名人が男性更年期であることを公表し、長期の療養生活に入るといったケースも見受けられるようになりました。

1.なぜ知られていない? 男性更年期の実態と経済損失

偶然にも、私が興味深く読んだ週刊新潮2025年7月17日号には、「80代でも発症する男性更年期障害を防ぐ」という特集記事が掲載されていました。

女性の場合、婦人科に更年期外来が併設されており、比較的オープンに語られることが多い一方で、男性の更年期は知名度がかなり低く、なかなか話題に上らないのが現状です。

しかし、この問題は決して看過できません。経済産業省の試算によると、男性更年期による経済損失額は年間1.2兆円にも上ると言われています。これは、企業にとっても社会にとっても、非常に大きな損失です。男性更年期とは、主に加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって引き起こされる様々な症状の総称です。疲労感、不眠、性欲減退、イライラ、うつ症状など多岐にわたります。

その診断には、国際的な尺度であるAMS(Aging Males’ Symptoms)スコアが用いられます。このスコアは、世界的に男性更年期の概念が認知され始めた背景から、自覚症状を客観的に評価するために開発され、現在では症状の重症度判定や治療効果の確認に広く活用されています。厚生労働省の明確な統計データはまだ少ないですが、今後、働く男性の健康課題として注目が高まることが予想されます。

2.企業が取り組むべき「真の」健康経営

近年、企業は「健康経営」に力を入れ始めています。特にメンタルヘルス対策への意識は高まっており、ハラスメントなどの「外的要因」による精神的な不調に注視する傾向があります。もちろん、これらは重要な取り組みですが、真の健康経営とは、もっと多角的な視点を持つべきではないでしょうか。

例えば、介護によるストレスや、そしてまさに今回のテーマである男性更年期障害に対する取り組みは、現状では十分とは言えません。

企業は、産業医と一体となって、これらの見過ごされがちな健康課題にも積極的に向き合うべきです。

男性社員が更年期症状で悩んでいても、どこに相談すればいいのか、そもそもそれが更年期症状だと認識していないケースも少なくありません。

企業が積極的に情報提供を行い、相談しやすい環境を整えることで、社員のパフォーマンス維持だけでなく、長期的なキャリア形成にも寄与するでしょう。男性更年期への理解を深め、適切なサポート体制を構築することこそが、今後の企業の競争力を高める鍵となるはずです。

なお、女性の更年期外来の例になりますが、女性の医師が担当する場合もあり、症状緩和のための薬も処方されるほかに、悩みを共有する相談相手という側面が強いです。

私の場合、左指の一部が猛烈にしびれてコップが持てなくなった時点で整形外科に行ったところ「手根管症候群」と診断されました。どうして急に?と首を傾げましたが、どうも介護疲れや更年期症状の一種らしいことがわかってきました。

そのまま整形外科に通い、リハビリや握力回復の運動を自宅で細々開始して1年が経過しました。

男性のみなさんも、かかりつけ医の診断から更年期障害の治療につながる環境になることを願っております。