【2024年9月】「2028年街から書店が消える日」の伝える現実【書評】

官民一体支援がニュースになる書店・図書館の今

最近、新聞やテレビで図書館や書店関連のニュースを見ることが多くなった。
この作品を読む前にも「図書館×書店支援へ」という新聞記事を発見した。
地域の活性化と読書人口を増やすことが狙いで、来年度の予算で4100万円を
盛り込んだそうだ。

具体的な取り組みとしては、図書館の書籍を書店で受け取ったり、図書館で
書店の書籍を注文できる仕組みを導入する。

また、地域の読書活動を支える人材を増やすために読み聞かせや本を紹介する
読書推進員の育成や絵本専門士の活用を勧めるらしい。

文部科学省が推進している取組だが、実は経済産業省も大臣直轄で
書店振興プロジェクトチーム」というのを開始している。

何もしないよりはやった方がマシだし、2省も乗り出すのは中々力が
入った政策である。
さてこの政策、書店の現状に即しているのか?
それを探るための1冊をご紹介したい。

◆書店は減っているが電子書籍は読まれている

出版科学研究所の統計によれば、出版業界は少子高齢化の影響で
需要が激減している。しかし電子書籍の割合は増えている。
老若男女に受けるベストセラーが出にくくなっているようだ。

ここでピンときたのは、アマゾンが電子書籍の出版を始めたのが
この時期(2015年頃)だったことだ。

私はkindle作家の集まりでは「後発組」(コロナ禍後にkindle出版)
と呼ばれる人間だが、この時期に早い人は目をつけて、出版開始して
いたという情報をSNSで知り、驚いたくらいだ。
現在、電子書籍はAmazonのkindleと楽天のkoboが主力だが、
両サイトで買い物をする人が多く、この市場を攻略しておけば
間違いないと言われていた。

◆書店関係者の赤裸々なインタビュー

今回ご紹介する「2028年街から書店が消える日」も、
実はAmazonのサイトから購入したのである。
こういう本こそ地元の書店で買うべきだと思い立ち、
地元の本屋(今やデパートと駅ビル内にしかない)に
出かけたのだが、販売されていなかったのだ。
書店の現状を憂う本なのだから、当事者である
街の書店が売らずしてどうするのだろう?

まさか書店にとっての最大のライバル、Amazonで
買うことになるとは思ってもみなかったのである。

ここがまず第一のショックだった。

本書は、全4部構成で、主人公である叔父さんと
甥っ子の聡の会話形式→インタビューで進む。

第1部は「本屋をめぐる厳しい現状」
第2部は「注目の個性派書店から見える未来」
第3部は「出版界の三大課題は正味・物流・教育」
第4部は「提言-生き残る本屋の道」

実名・匿名が入り混じるインタビューで構成された
ルポルタージュなのだが、私が驚いたのが雑誌の取り扱い
についての記述だった。

・付録のついている雑誌は、別々に送られてくる
・書店員が無償で付録を組み合わせて販売する
・コンビニは発売日の朝までに届ける「雑誌発売日協定」がある

この3つは特に驚かされた。
付録が輪ゴム止めされて雑誌に封入されているのは、
書店員が無償でやるのが悪しき商慣習だったのかと
初めてわかったし、私が毎週木曜日にコンビニに買いに行く
週刊文春や週刊新潮は、物流2024年問題で大変な中、
ドライバーさんが必死に運んできてくれているのだと
思うと、粗末に読めなくなった。

コンビニの雑誌発売日協定については、現在最も
問題とすべきことらしいのだが、この問題について
コンビニ業界のトップからインタビューが取れなかったのが
残念。

◆官の勧める政策は果たして適切なのか?

出版→取次ぎ→書店・コンビニの流れの中で、
再販制度の問題もあるし、家賃が高騰して閉店する
書店の問題、書籍と雑貨の抱き合わせ販売で生き残る道など
現役の書籍関係者の様々な声が聞こえる中で、
冒頭の文科省や経産省の取組みは、果たして
現実を見据えた効果的な取り組みなのだろうか?

子どもの情操教育には必要だから何とかしてください
だけでは、本屋も図書館も生き残れないのである。
セルフ出版のAmazonで書籍販売経験のある私が
いうのもなんだが、

・図書館は電子書籍が読める図書館を増やすこと
・地域密着型の書店は地元選出の作家の本を売り出す
・POD(プリントオンデマンド)を推進する

辺りを考えついた。
読むのが好きな人は、書くのも好きな人だ。
自費出版より安価な値段で地元の書店が出版サポートして
地元の書店中心に売り出す。
その取り組みをSNSで発信し、その書店限定でお取り寄せ
できる本を通販すれば、売り上げと話題性が作れるのでは
ないだろうか?

文科省や経産省のご担当者は、読書好きを増やすことも大事だが
「飯の食える書店(図書館)」を書店、出版、取次関係者と
相談しながら作ってほしい。

ご紹介した「2028年街から書店が消える日」はこちらクリック