【2024年6月】「観光ブランドの教科書」の引力【書評】

見落とされがちな日本人客の重視にスポット

コロナ禍で観光業界が大打撃を受けた4年前とは打って変わり、
2024年はインバウンドが好調だ。
ある企業の調査によれば、飲食店には客足が戻っており、東京や京都では「ほぼ毎日」
訪日客の来店がある飲食店が、コロナ前の2倍らしい。

しかし、日本人の来店が頭打ちになっているという。
このような状況を見越した予測本が、実は5年前に
「観光ブランドの教科書」として刊行されていたので、
ご紹介したい。

◆誘致の発想は限界

内向きの日本(人)は、観光客を呼び込んで
経済活性化すべきだ、だから自分の住む町を
ブランド化し、どんどん「売り込み」をかけろ
というのが、長らく観光業の鉄則だった。

しかしこの考え方は21世紀の日本でもはや
通用しない。
ぜひ来てくださいではなく、
ぜひ「行ってみたい」と思わせる
マーケティングの方に重きを置くべきだというのが
冒頭の提言だった。
押すのではなく、「ひきつけ」の発想転換だそうで
これをやるためには、観光客が何を求めているのかを
探ることが大切だという。

◆地域はブランドになるのか?

海外をイメージして「ブランド」というと
カバンや洋服などの商品を浮かべがち(パリ)だが、
地域の名前を聞いた時に、同じようにイメージを
浮かべられる日本国内の都市の調査結果等、
中々凝った角度から紹介されている。

長野県というより⇒軽井沢
岐阜県というより⇒飛騨高山

といったように、都道府県ではなくその中にある
都市がブランド化されている場合、そこに行きたいと
いう人の回答が上回るというのが興味深い。

◆ブランドアップのキーは「食べ物」

筆者の鋭い視点は、「京都」「北海道」「沖縄」
での旅行を記述したブログ分析している。
この辺の視点は素晴らしい。

それらのブログで頻出される形容詞を調査し、
3つの都市に必ず入るワードに
「おいしい」が入っていることに着目した。

そして食の「名物料理」があるところが
生き残れる。
その食べ物を食べている自分を観光客が
思い浮かべれば成功ということらしい。
(北海道だと毛ガニやラーメンだろうか)

このような分析データが随所に登場、
ブランド作りをどのようにすべきかの
6つのステップ

1.組織作り、ベクトル合わせ
2.地域の現状分析
3.ブランド、アイデンティティの構築・共有
4.ブランド戦略の実行
5.ブランドの評価・モニタリング
6.ブランドの磨き上げ

これらを図式つきで親切に解説、この発想力は
観光担当者以外にも非常に参考になるだろう。

◆量より質への観光が日本人客を惹きつける

日本人の旅行消費額は、2019年当時、8割以上を占めていた。
観光振興のためには、日本人旅行の活性化がポイントだと
筆者は提言している。

これについてだが

リピートビジネス: 日本人客はリピート率が高く、定期的に訪れる。
彼らは地域の飲食店や観光スポットを支え、地域社会との結びつきを強める可能性がある

地域社会への貢献: 日本人客は、地域の文化や伝統を理解し、
地域の特産品を購入することで、地域社会に貢献する可能性がある

と思う。

免税需要で売り上げ最高額!という文字が躍ることが多い昨今、
自国の観光客に目を向ける意識が再び必要なのではないだろうか。

ご紹介した「観光ブランドの教科書」はこちらクリック