• 地域のエレガントな知恵袋~Elegant wisdom for our town 〜 OFFICE UKAWA G.K.

    アメリカ大統領選挙の争点をニュースで見ると、「公的保険」の導入を巡って激しい応酬が繰り広げられています。何でも国が賄うのはおかしい、保険は民間で行うべき、支払えない人は努力が足りないからだ、というお国柄。これからご紹介するニュースは、あちらの国では一蹴されるかも。

    ◆労働者災害補償保険(労災)について

    9月26日付共同通信ほか「ベテラン俳優が労災申請 撮影時に脚骨折『実態は労働者』」のニュース。
    当事者の俳優(女優)さんは、所属プロダクションから仕事を請け負う形だったが、2017年にドラマ撮影中に足を骨折。労災申請したが、個人事業主の扱いとして2度却下され、労働保険審査会に再審査請というのがあらまし。
    労働者災害補償保険法(労災法)の目的等についてですが、

    業務上の事由又は通勤による労働者の負傷疾病障害死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする

    とあります。労災法は、労働者を使用する事業を適用事業とするものです。つまり、個人事業主や法人の代表取締役や同居の親族なんかも、原則として適用外となります。判断の難しいものについては、その都度、労働基準監督署に相談して、適用か否かというのを判断していきます。
    所属プロダクションから仕事を請け負う形でドラマに出ていたのなら、明らかに個人事業主となり、労災の適用外です。
    また、労災法には一人親方その他自営業者が特別加入となる制度があります。例を挙げると、個人タクシーの運転手さんや大工さんです。これらの人達は、一人親方さんたちが集まった団体が特別加入申請書を提出して承認を受ける流れです。この一人親方の制度、危険なお仕事と背中合わせの方たちを救済するのが主な目的ですので、事務職の社長、士業で事務所を構える方はそこから外れます。あとは、民間の保険に個人で入って下さいということになります。
    私も、合同会社を経営する頼りない親方なので、労災の適用除外となります。業務上の事由又は通勤で災害にあわないよう、細心の注意を払って生活しています(でも少しおっちょこちょい)。

    今回の俳優さんの労災認定の要望、伏線があります。2019年12月21日付の同じく共同通信「俳優ら、労災保険加入を要望 厚労省に、けが・休業補償拡大も」というニュース。俳優らでつくる「日本俳優連合」が、俳優やダンサーなど芸能分野で働くフリーランスを労災保険の適用対象に加えるよう厚生労働省に求めるという要望。
    まだ、コロナウイルス騒ぎが起こる前の出来事です。これ、日本俳優連合に加入を認めてしまったら、日本中のフリーランス全部に認めなければなりません。
    そもそも、俳優さんが自分で事務所を作り、従業員を雇えば法人として適用事業になります。または、日本俳優連合が労災や年金に準ずる手厚い制度を、民間の保険会社と組んでプランとして提案し、そこに加入した俳優さんが、保険料を納めるのが理想。
    日本俳優連合は、コロナウイルス禍で緊急事態宣言が発令された時にも俳優を特別保護する制度の適用を再三、求めて、インターネット上で「フリーランスでも申請できる持続化給付金に申し込みをしたらどうなのか」と炎上したことも記憶に新しいです。

    ◆過去にあった事例

    数年前、毎日テレビで見かけた売れっ子タレントが、バラエティー番組の収録中にケガをしたことがありました。当然ながら労災の適用外でどうするのかと思っていたら、所属事務所は2~3週間でご本人を仕事復帰させました。コルセットをはめて見るからに痛々しい姿。
    その当時、ある週刊誌で「治療費の代わりに他の仕事を回すから」とテレビ局から所属事務所に連絡があり、療養もそこそに出てきちゃったとありました。読んだ瞬間、「ワイルドだぜ~」とつぶやいてしまいました。重症でしたが、動ける・しゃべれるならそれをネタにしてバラエティー1本出演できれば、事務所やご本人にお金が入ります。まさしく「災い転じて福となす」というやつですね。

    ◆最近感じたこと

    芸能関連のニュースを観ていておや?と思うことは他にもあります。
    ある芸能事務所の所属タレントAさんが、薬物や不倫等のコンプライアンス関連の不祥事を起こしました。CMスポンサーやレギュラー番組の担当者は当然、大激怒。そんな時に、「うちの所属タレントBを出します。ノーギャラで結構です。その代り、違約金は勘弁してください」というケースがあったそうです。事情を察した所属タレントBさんは、事務所の一大事とばかりにテレビ番組をはしごして、CMに代替出演。
    バブル全盛期なら大目に見てもらえましたが、SNSが発達している昨今、視聴者も以前よりコンプライアンスに対して厳しくなっています。そして、コロナ禍ですから、広告宣伝費に対して、企業の側もシビアになってくると思います。もしかしたら、今後はCMを中止にして違約金請求に入る企業も少なからず出てくるかもしれませんよね。

    労災法の問題と同様、「自分たちは保護されていない」と主張するだけではなく、まずは業界内の体質改善をすること。その方が日本の芸術文化の保護につながると思います。


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