• 地域のエレガントな知恵袋~Elegant wisdom for our town 〜 OFFICE UKAWA G.K.

    恵まれた家庭環境に生まれて、幼少期から名門校に通い、思春期に海外留学。名門大学でテニスサークルに加入、そして父親の縁故で一部上場企業入社、イケメンエリートと結婚、寿退職。
    こんな人生だったら、どんなにいいだろう…と思ったことは、一度や二度どころではありません(正直に)。
    少しでもいい人生、納得のいく人生を送りたいからこそ、努力して軌道修正していこうということになりますが、社会状況や仕事先の業績や自身の健康問題などが複雑に絡み合い、そうはいかないこともある。
    先週、読売新聞9月3日付のインターネット記事で掲載されて話題になっていた「紹介予定派遣の雇用拒否に関する提訴」問題を読み、思い出したことがあります。そのお話。

    ◆労働者派遣制度をざっと説明

    保健師資格を持つ2名の派遣社員の方が、紹介予定派遣制度を利用して、ある企業に派遣されました。その派遣先で半年間働いたものの、産業医との協力体制がうまくいかなかったという理由で直接雇用を拒否されて、派遣契約を打ち切られました。2人は「産業医からのパワーハラスメントがあった」「産業医との関係は雇用拒否の理由にあたらない」として、直接雇用を求めて京都地裁に提訴するとしています。
    世代によっては、労働者派遣法や派遣社員についてあまり知識のない方、派遣社員経験がない方には中々理解できない方もいますので、簡単に説明すると

    1.派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業へ派遣される制度
    2.雇用保険や社会保険は派遣会社が加入
    3.紹介予定派遣制度というのは、派遣先企業での正社員採用を前提に6か月以内の試用期間を決めて派遣社員として勤務する制度

    といったところ。
    通常の労働者派遣の場合、事前面接は禁止されています。しかし、これは建前上のことで、「インタビュー」「顔合わせ」という名目を派遣会社がつけて、派遣社員を伴い、派遣先企業へ行くのが一般的です。年齢や性別、婚姻の状況、家族の状況といった本人の職務遂行能力とは無関係の情報を派遣先に通知してはならないと言われていますが、実際に面接に行くと、「20代の女子社員が多いので同世代の女性が欲しかった」と言われたり、「子持ちの有無」なんかをしつこく聞かれたことがありました。「違法でしょ!」とその場で言いたいところをぐっとこらえて笑顔で面接、しかし、同席した派遣会社は違法行為について何らフォローするでもなく、知らん顔。腹が立つことこの上ない。
    今回、紹介予定派遣と記事で紹介されていますので、恐らく、派遣先企業との面接が2~3回でしょう。また、企業によっては、筆記試験を課したりする場合もあります。
    同じニュースをネット上で何種類が拝見しますと、「派遣会社抜きで面接しており、派遣制度を逸脱した実質的な採用行為」と書かれていました。この案件を持ってきた派遣会社として、営業担当者を随行させた上での面接って当たり前じゃないかと思いますが、経験談が掲載されているサイト等を検索したところ、同行しない場合もあり同行しても入口までとありました。いやあ、ビックリです。

    ◆雇い入れの自由があるというものの…

    試用期間中は派遣労働者の扱いなので、雇用保険や社会保険は当然、派遣会社持ちです。その場合、何かトラブルがあったら、派遣会社が苦情受付窓口になる。記事を読み進めると、「業務連絡のささいな行き違いをきっかけに2人が産業医から無視されるようになった」「ミーティングに参加させてもらえなかった」「カルテ整理以外の仕事を与えられなかった」というパワーハラスメントを被害を訴えています。
    こういう場合、派遣会社に訴えたとしたら返ってくるのは「じゃ、我慢せず試用期間中でお断りしたらいかがでしょうか」の一言でしょう、恐らく。
    このご時世、誰だって正社員採用で安定して働きたい、クセのある人がいても職場全体が悪いわけじゃない、ひょっとしたら、そのクセのある人が異動になり、環境がガラッと変わる可能性もあるし、そうなることを願いながら我慢できるかもしれない…と思う人だっている。それが痛いほどわかるからこそ、こういうニュースは胸が痛みます。

    派遣会社というのは、そういった人の深層心理を巧みに利用するというのか、こういったトラブルが発生しても、派遣先企業に抗議するなんてことはまずしないでしょう。なんたって派遣料を頂くお得意様です。
    採用する側にも雇い入れの自由がありますので、こういった訴えが試用期間中に出された場合、「じゃ辞めて下さい」というところが圧倒的多数だと思います。

    ◆労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が今年6月から

    コロナウイルスによる緊急事態宣言とテレワーク推進の影に隠れがちですが、2020年6月から改正労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)により、大企業はパワハラ防止策を取ることが義務づけられています。パワハラの分類と判断例の中には、「人間関係からの切り離し」「過小な要求」等も示されており、新聞記事に書かれているパワーハラスメントの内容が、どこまで認められるかが争点になるかもしれません。また、派遣会社名については一紙も掲載されていませんが、大手の派遣会社なのか、それとも派遣先企業のグループ会社にあたる派遣会社なのか、それにより、出される情報や状況が変わる可能性もあります。
    記事には、解決金50万円を提示したが2人は応じなかったとありますので、企業側にも突っ込まれては痛い部分があるんだなあと思います。最終的な解決金が、どの位上積みされるのかに注目しています。

    ◆心が折れた日々、そして今は

    もはや10年位前の話になります。10年間正職員として働いた公益法人を、すさまじいパワーハラスメントで退職。しかし、団体勤務以外の職歴もなし、30過ぎた女を正社員として雇ってくれるところなど、どこにもありませんでした。ハローワークに通いつつ、求人サイトはもれなく検索、人材紹介会社と名のつくところには片っ端から応募。しかし、最大手には「公務員、団体職員、弁護士事務所職員、予備校職員の登録はお断りです」「どうしてですか?」「コスト意識と社会常識が民間企業とは違うから」とにべもないお返事。

    ようやく登録が認められ、面接にごぎつけても、私の職歴が国論を二分するようなエネルギー関係の団体だったため、私の人柄やスキルは全く見てもらえず、「自分は若狭湾の近くで生まれ育った。あんなきれいな海の周りを発電所銀座にして恥ずかしくないのか!」と責め立てられたり、「天下り財団の出身」と非難されたことがあります。まさしく、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の状態。
    失業給付が切れるギリギリまで探しても正社員の道はなく、派遣社員にならざるを得ませんでした。しかし、派遣社員になっても、「民間企業で働いた経験がない」という理由で、ここでもエントリー段階でお断り。結局、別な公益法人に派遣社員で行くという悪循環でした。
    一生懸命働けば、こういう公益法人では正職員へのお声かけがあるからと誰かに説得され、耳が痛み、片頭痛に見舞われても会議のテープ起こしを何本もこなし、お茶出し、茶碗洗い等、本来、専門5号のOAクラークにはやらせてはいけない業務(複合業務)まで、文句言わずにやりました。飲み会にも笑顔で参加、「うちより大きい公益法人にいたのに、何で派遣なんかやってるわけ?」と言われてもじっと我慢。身銭を切ってお菓子も配りました。
    正職員採用をほのめかすお話が、営業を通じて2~3回ありました。その度に、ぜひよろしくお願いしますとお答えしていました。

    2010年、民主党による事業仕分けに遭い、職場の風向きが変わりました。そして、複合業務をやっていた記録を3年間つけていたこともあり、派遣会社の営業を通じて直接雇用の申し込み。「今より悪い条件にしないから」という言葉に安心していたのに、土壇場になって、「時給1,000円のアルバイト。この条件で呑まなければ切る」というだまし討ちのような仕打ちに遭いました。

    派遣会社には「他の派遣先を探しますから」「こういうことはよくあることだから強靭な精神が要求されます」と屁理屈を並べられましたが、精神的なショックは大きく、弁護士の先生に相談に行きました。そこでは、「こういうことで雇い止めにされるケースというのは非常に多い。悔しい気持ちはわかりますが、派遣先企業と直接の雇用関係にないので、弁護士として交渉できない」と言われ、結局、泣き寝入りでした。
    その後、別な派遣や契約社員で食いつなぎ、正社員復帰したものの、介護をめぐる嫌がらせに遭い、ついに退職。起業したのが現在の状況です。

    何でこんな目に遭わなければならないんだろう、何か悪いことでもしたんだろうか、人間だから欠点がないとは言わないが、神様も無慈悲だなあと思ったことは何度もあります。我ながら、よく生きてたなあと思います。
    今はコロナウイルス禍で確かに楽ではありません。それは世界共通のことなので、辛抱するしかありません。
    それでも、職場の人間関係によるストレスから解放され、職歴を全否定されたり、だまし討ちにされたりすることもありません。
    今回の記事に掲載された保健師の方、あるいは現在の職場で不遇をかこつ方、派遣切りされた方はたくさんいらっしゃることでしょう。それでも、真面目に生きていれば、いいことの一つや二つはあります。
    お互い、希望を捨てず、がんばりすぎず、ボチボチやっていきましょう。


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