• 地域のエレガントな知恵袋~Elegant wisdom for our town 〜 OFFICE UKAWA G.K.

    こちらのブログでは時々、料理にまつわるテーマもご紹介しています。
    しかし、「料理が得意な方」と「食べるのが得意な方」の2名で交代執筆してまして、今回は「食べるのが得意な方」がお届けする、楽しい料理本の復刻話です。

    ◆男子、厨房に入る

    「食べるのが得意な方」も、必要に迫られて料理をします。時間がない、手際が悪い、ネタに詰まる。そんな時に密かにバイブルとしていたのが、昭和の無頼派作家・『火宅の人』で有名な檀一雄先生の『檀流クッキング』でした。檀先生の娘さんが、NHKの『連想ゲーム』(檀さん、大和田さんは、檀さんから)でおなじみの檀ふみさんだということはあまりにも有名ですが、当時、娘のふみさんがラジオ番組やエッセイ等でお父さんの思い出話をしたことがきっかけで、絶版となっていた過去の著作が復刻するケースがありました。
    私が持っている『檀流クッキング』は、2007年の改版6刷。檀先生がそもそも料理をすることになったきっかけ、世界各地を放浪して覚えた料理をエッセイで紹介する本ですが、テーマを一つ読み終えるごとに料理が1品できるような流れになっていて、「分量~グラム」等の表示は一切なし。
    「男子、厨房に入らず」が当たり前だった時代に、市場への買い物が日課で、毎日家族の晩御飯を作ってしまう檀先生の日常生活が生き生きと描かれています。
    今回、初めて知ったのですが、ご子息の太郎さんと奥さんの晴子さんがこの本と記憶を頼りに『完本檀流クッキング』というのを出版されています。

    ◆『檀流クッキング入門日記』が復刊

    今月、晴子さんが大昔に出版された『檀流クッキング入門日記』が復刊されたというので、早速購入。
    太郎さんと学生結婚した晴子さんが、離れに住むチチ(義父)が毎晩作る手料理のおいしさに感化され、チチの台所仕事を手伝ううちに覚えた料理スタイルが、もれなく紹介されています。

     

     

    もし、チチの作る料理がすべて無駄なく合理的な事務のようなものであったら、私はその料理がいくらおいしかろうとも、作ることはもちろん、食べるということすら嫌いになっていたかもしれません。私には、料理の本には書かれていないところでの料理とのつき合いのほうがむしろ楽しかったし、分量を暗記したり、復唱したりの苦しみで目を三角につりあげる必要もなく、自分の五感を駆使さえすればいかなる料理とて恐れることがないのだと、それがわかったからこそ料理をすることが楽しくもあり愉快になったのです。

    この一文が、「檀流クッキング」の本質を非常に言い当てています。そりゃ、本格的に習っておいしく作るのも大切ですが、料理そのものが苦痛となっては何にもならない。ここは非常に大切です。計量スプーンで測る、秤で計量する料理であっても、「料理とのつき合い方」が程よく苦痛でないのが一番です。

    ◆固定観念にとらわれない

    私は道産子で、親戚縁者も小樽市内にたくさんいました。
    今は亡き祖母や親戚縁者は、網元がルーツということもあったせいか、海産物を好みました。
    しかし、それが極端な「食わず嫌い」を招きました。おば達は「獣の肉を食べるなんて」と肉類を毛嫌いする、「ごちそうを食べに行こう」と出かけると、蕎麦か寿司しか食べない、よそのお葬式に参列したときに、「精進落とし」の料理が気に入らず、他の人に自分の分を勧めて一箸もつけないなんてことがありました。喪主は葬儀後、おば達にお土産用の寿司を一折ずつ持たせて、後ろ指を指されないようにしたなんて話も。
    しかし、祖母と孫、2人で食事に出かけると、祖母はマカロニグラタンやら照り焼きハンバーグなぞに舌鼓を打っていましたので、祖母本人は洋風も大丈夫たったのかなあと思います。
    檀先生は1912年生まれということですから、祖母よりも年長者です。しかし、世界中を放浪してその国の料理を食べるって暮らしをしていましたから、「ボルシチ」「クラム・チャウダー」「パエリヤ」といった、昭和40年代の日本では珍しい料理も紹介されています。
    食材の全てに無駄がない、優劣をつけない、固定観念にとらわれないというのが、この時代に徹底されているのは素晴らしい。
    檀流クッキングで紹介されたレシピと、晴子さんの入門日記に書かれている思い出話でいくつかリンクするものがあり、

    ■からしれんこん
    檀先生は、マナ板の上にみその山をつくり、レンコンを垂直に握ってそのからしみそを上でトントン叩く
    ■梅干し
    多少青い梅の実を買ってきても塩でつければ何とかなる
    ■お粥
    病気以外でも日常食として食べる

    と面白おかしく紹介されています。

    ◆檀流クッキングに「食育」が追いついた

    健康管理士の観点から考えます。『檀流クッキング』や『檀流クッキング入門日記』が出版された1970年代は、「食通」「食道楽」という言葉が隆盛でした。男が料理をするなんてこと自体、考えられなかったし、知育や体育と言う言葉があっても、「食育」という言葉はあまり広まりませんでした。
    しかし1990年代に入ると、食に関心のある人が増えてきたので、この言葉が頻繁に使われるようになりました。
    2005年6月17日に「食育基本法」が公布され、同年7月15日に施行されましたが、その基本的施策は以下の通り。

    1.家庭における食育の推進(第19条)
    2.学校、保育所等における食育の推進(第20条)
    3.地域における食生活の改善のための取り組みの推進(第21条)
    4.食育推進運動の展開(第22条)
    5.生産者と消費者との交流の促進、環境との調和のとれた農林漁業の活性化等(第23条)
    6.食文化の継承のための活動への支援等(第24条)
    7.食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進(第25条)
    参考:健康管理士テキスト4 生活を守る栄養学

    特に、5・6・7の3つに関しては、檀先生が実践してきたクッキングがドンピシャではまっています。
    食事を楽しむということが、「健康寿命」を伸ばすことにつながるのは、間違いありません。
    40年近く経って、ようやく時代が追いついてきたって感じです。

    書いているうちに、お腹が空いてきました。腹八分目を心がけ、「檀流クッキング」から何か一品、作ってみよう!


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